「朽ちていった命」 -被ばく治療83日間の記録-
1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨海事故で、大量の中性子線を被ばくした大内久さんは83日間の闘病の末に35歳で亡くなりました。目に見えない放射能に体をむしばまれていく様子と、医者や看護師が苦悩を深めながら治療に望んだ姿を関係者への取材で明らかにしています。
大内さんは放射能で染色体を破壊されて、新しい細胞を自ら作り出すことができなくなりました。しかし、死後の死亡解剖の結果、心臓の筋肉だけはしっかりと形を保っていたそうです。医師の一人は、理不尽な事故に見舞われながらも「生き続けたいという大内さんのメッセージを感じた」と振り返っています。
福島第一原発放射能漏れからわずか12年前の悲劇。原子力行政の存続が問われるなか、この本は事故を風化させてはならないと訴えています。
NHK「東海村臨海事故」取材班著 新潮文庫
2012年7月14日