2021年度神奈川県当初予算と人員配置に関する県職労連の見解

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3年連続で定数増(104名)も保健所配置は+5名にとどまる。知事業務見直しでコロナ体制強化 処遇改善による保健師確保を

2021年2月9日、黒岩神奈川県知事は、2021年神奈川県議会第1回定例会に提案する神奈川県予算案及び条例案に関する記者発表を行いました。県職労は予算案について財政課に、定数関係について人事当局及び各局に対しヒアリングを行いました。

「新型コロナ対応・児相の強化」「中小企業等への支援体制強化」などで人員増
県職労が3年間要求続けた精神科救急医療業務の人員増を実現

 職員定数は、昨年、一昨年に引き続き知事部局で104名の増となり、各局に配分されました。その主な増要素は、新型コロナウイルス感染症対策の強化で56名、児童虐待対応の支援強化で62名、中小企業等への支援体制強化19名と、地域経済の底支えも含めたコロナ対策の強化や児相の体制強化が図られました。県施設の保全業務、防災推進や災害復旧など、県民のいのちを守る施策への増員もされました。大和綾瀬地域児童相談所の新設にかかる増員や中井やまゆり園の重度の支援を要する利用者への生活支援体制強化など、職場や県民生活の実情に応じた増員も盛り込まれました。
 そして、職場分会や支部の組合員が要求の声を挙げ、精神科救急医療体制業務の体制強化が実現できました。削減が続けられた教育委員会(学校以外の教育機関を含む。)における8名の人員増が行われました。
 職場から組合員が声を挙げ続けたことが、これらの困難な職場での人員増に繋がりました。

コロナ応援依存からプロパー人員の更なる強化を 保健所の専門職人員強化は待ったなし

 他方で、新型コロナ対策強化56名のうち保健福祉事務所への配置は5名に留まりました。そして、2021年度保健師の採用予定は6名に留まりました(ほか経験者採用9名)。保健福祉事務所とセンターは計8カ所ありとても足りません。しかし、自治体での保健師確保が難しいため採用計画の拡充も困難と言います。だからこそ、保健師をはじめ専門職の処遇改善を行うことで人材確保を図ることが急務です。今期の交渉で導入を決めた退職者の再採用制度の運用開始も含めてあらゆる方策により保健師を始めとした専門職の人材確保を強化すべきです。
 また、医療危機対策本部は応援職員も含め340名規模とされ応援体制への依存は解消されません。知事肝いりの事業の見直しとしてSDGs業務の人員減(4名)がありますがまったく不十分です。応援体制が続き県庁全体が疲弊しきっている中で、応援体制への依存ではなく対策本部や保健所の更なる人員体制強化を行うためには、知事肝いり不要不急事業の更なる見直しに踏み込むことが必要です。
 なお、DX(デジラルトランスフォーメーション)の推進の人員増(9名)は、県民生活や職員の働かせ方に大きな影響を及ぼします。国に追従、先走りをするのではなく、県民や職員への情報公開も含め、慎重に進めることが求められます。

令和3年度当初予算案-新型コロナ対応を進めつつ水防・まなびやなど県民まもる事業も推進

 2021年度予算編成は、コロナから「いのち」と「暮らし」を守り抜くとして、危機的な予算状況の中、県主催イベントや国外派遣の原則中止・延期等、徹底した事業見直し、県債や財政調整基金の活用など必要な対応を図る、新型コロナウイルス感染症対策として医療提供体制の維持や県内経済の着実な回復に向けた施策を的確かつスピード感を持って実施するとしました。
 一般会計当初予算額は過去最大の2兆484億円。新型コロナ対応(1,522億2,331万円)について、医療提供体制を維持するため病棟確、新型コロナ専門病棟、宿泊療養施設の運営、ワクチン接種体制整備等。経済回復支援について制度融資枠3,000億円(過去最大)確保、事業継続支援、県内工業製品の割引購入支援、県内旅行の割引等による需要喚起などとしました。そして、新型コロナにあっても県民生活に直結する事業として、水防災戦略の推進として計画比+96億円の560億円で危険個所の工事・遊水地の整備を。新まなびや計画の推進として前年度比+68億円の280億円により校舎耐震・老朽化対策・トイレ洋式化・空調設備等を進めるとしました。

制度上認められる県債の大量発行、財政調整基金の活用、知事肝いり事業の見直し等で財源確保

 SDGsやベトナムフェスタ、ME-BYOサミットなど知事肝いりの県主催事業(見直し額△8億円(昨年度比△72%)などを見直し△110億円(前年度△80億円)としました。そして、減収補填債等の発行(減収補填債(法人二税、地方消費税等の減分)、調整債、特別減収対策債(使用料等の減分)、猶予特例債(法人二税、地方消費税等の徴収猶予に伴う減分)、臨時財政対策債、緊急防災・減災事業債等 計3,185億円)、財政調整基金の取崩し(132億円 取崩後残高見込346億円)など、制度上認められる県債を大量に発行して何とか予算を組んだとしました。

県民のいのちと暮らしを守るため更なる知事事業見直しを

 財政難にあっても新型コロナから県民のいのちを守りつつ、水防や新まなびや計画など県民生活に直結する事業についても着実に推進を図るとしたことは、コロナで県民生活が危機に瀕している中での予算とて一定の評価ができます。他方で、今後、「かながわモデル」と言われたコロナ対応の検証の中で、引き続き行うとされる「感染症防止対策取組書」等の見直しも求められると思われます。また、県債の大量発行で乗り切るのであれば、未病、SDGs、ヘルスケア等、来年度も引き続き実施するとされる事業についても不要不急の観点から更に踏み込んだ見直しが必要です。

県民のいのち、暮らしと営業を守る予算と組織・人員配置となっているか。職場から声を上げていこう

 配置定数など詳しい情報は、県職労連情報No.104(学習資料のページ)をご覧ください。

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