パワハラ認否、責任所在など多くの問題点(1)

 提案・声明・見解

県職員パワハラ過労自殺の調査報告書(5/1)に対する県職労見解

 5月1日に県の第三者委員(不祥事防止対策協議会のメンバーで構成)による、県職員パワハラ過労自死事件に関する調査結果が記者発表されました。

パワー・ハラスメント緊急調査チーム及び神奈川県職員等不祥事防止対策協議会からの報告について

 調査の目的は「元財政課職員の死亡事案について、第三者機関として個別調査(聞き取り調査)を実施し、パワー・ハラスメントの該当性等を含む当時の知事室及び財政課における業務の負荷、課題等について検証し、県における業務のあり方やパワー・ハラスメント防止対策等について意見をまとめる」としています。しかし、調査結果では、焦点となっていたパワハラの認否を明らかにしませんでした。また、知事「特命事項」の問題点や、知事や加害者である知事室上司、管理監督者、産業医、人事当局など、加害責任や職務安全配慮義務等を負うべき者の責任を明らかにしていません。さらに、人事評価や本人の実情を考慮しない人事異動の実態など県庁での人事労務管理の問題点に言及していません。県職労は「二度とこのようなことを繰り返さない」観点から、報告書には多くの問題点があると考えます。

 知事室や財政課をはじめとした県庁内での恒常的な長時間労働やパワハラから職員を守ることができず、事故を防ぐことができなかった責任は県職労にもあります。県職労に多くの職員を結集させてすべての職場を監視する力を持っていれば、職員がパワハラを受けて自殺に至った重大事故は起きなかったのではないかと、忸怩たる思いです。

 報告書をどう受け止めて活用するのか、今後の裁判をどうするかを含め、当局は県民、職員に判断を示す必要があります。県職労は「二度とこのようなことを起こさない」県庁職場をつくる一歩として報告書に対する見解を明らかにします。県職労は、これからも県職労見解や組合員・職員の声を元に当局との交渉を行い、県庁でのパワハラを根絶する運動を引き続き行っていきます。

 組合員、職員の皆さん、報告書や県職労見解に対し忌憚のないご意見を県職労あてお寄せください。


1 遺族の提訴と第三者委員で調査を行った経緯

 2016(平成28)年に財政課に勤務していた職員(37歳)が自殺し、2019(平成31)年4月10日に長時間労働による公務上災害と認定されました。しかし、遺族が求めた知事室上司からのパワハラに対する調査がされなかったこと、自殺について県が事実上の隠ぺいをしたこと、県(知事)からの謝罪がなかったこと、県の労務環境の改善が見られないことなどを理由に、遺族は「このままではまた同じことが繰り返される」と県を提訴しました。知事は、記者会見で「第三者委員でパワハラ検証する」「遺族に心からおわび」と述べる一方、「裁判で真実を明らかにする」と応訴しています。

 県職労は、遺族である原告(母親)からの支援要請を受けて、被災者の友人らとともに、県職労情報等による裁判内容の周知や、組合員や関係団体に呼びかけ裁判傍聴などの支援を行っています。

2 調査結果-パワハラ認否明らかにせず

①知事室在籍時月100時間超 財政課負担軽減後も過労死ライン超

 知事室在籍時も時間外勤務が月100時間を度々超えていた。 財政課では4月から10月までの時間外勤務が月100時間を超え7月は214.18時間であった。本人の事務分担を軽減した9月以降も過労死ラインを超える状況が続いていた(10月は月100時間超)。結果からみれば、被災者を強制的に帰宅させたり休暇を取得させるといった対応が必要であった。

②上司の指導に問題 誰もがパワハラと感じる言動は確認できず

 知事室上司は本人に対して、他の職員よりも高い頻度で怒鳴ることがあり、指示があいまいで職員が困惑する状況にあった可能性が高い。執務室に響き渡る声で度々怒鳴られることは、職員によってはパワハラと感じる可能性があり、指示の具体性の欠如をあわせ考えると、指導の方法に問題があった。他方で、上司の言動に対する職員の評価は一様ではなく、周囲からみて誰もがパワハラと感じるような人格否定や執拗な攻撃の言動は確認できなかった。

③その他

 ア)組織体制 予算などの後ろ盾がない課題で即応が求められる場合にも職員がバラバラに対応し組織的な対応がされなかった。イ)人事異動 職員が過剰な業務への精神的・肉体的な負担を一人で抱え込んで周囲に見せないことで人事担当者が本人の勤務状況を客観的に把握できなかった。ウ)遺族への対応 関係職員に聞き取りを行ったところ県に事実を隠す意図があったといえないが、遺族との継続的なコミュニケーションを怠った結果、遺族にそのように受け取られてしまった。

④再発防止策

 〇長時間勤務を縮減させる働き方改革のより一層の取組み(負担軽減を行う際に職員に配慮する) 〇パワハラを認識させるマネジメントサポートシステムの改善 〇職員アンケートの改善 〇組織として対応し成果を求める風土の醸成 〇朝夕ミーティングでの職員状況の把握 〇人事担当者による遺族への対応 〇パワハラ研修(個人攻撃は問題の解決や改善をもたらさない。「加害者にならない、加害者にさせないため」の視点も重要)

 なお、記者会見で委員は「遺族と上司の認識が大きく異なり、職員の聞き取りでもパワハラがあったかどうか確証をえられなかった(神奈川新聞)」「裁判案件になっていることもあり、パワハラを認定する職責にはないので認定はちゅうちょする(時事通信社)」などとパワハラ有無を認定しない理由を述べたとされています。

パワハラ認否、責任所在など多くの問題点(2)に続く

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