国の責任で休業補償など対策を

 提案・声明・見解

声明

組合提案でなく、個人の判断に
国の責任で休業補償など対策を

 4月24日に自治労神奈川県職労は「くりえいてぃぶ号外」で「みんなの力で支援の輪を広げよう」「定額給付金(10万円)を、コロナ休業者等の支援に充てることを組合員、職員の皆さんに提案します」と呼びかけをはじめました。

 翌日の朝日新聞に取り上げられ、ネットでは「知事の代わりに労組が提案か」「労働者を守る立場の労組の主張とは思えない」など批評されています。その影響は「自治労神奈川県職労」にとどまらず、県職労も含む他の労働組合の組合員、そして県内の労働者間での分断を招きかねない問題をはらんでいます。新型コロナに職員一丸となって立ち向かっている士気にも影響を被りかねません。

 そこで、この問題に対する県職労の見解を明らかにします。

一人10万円がなぜ支給されるのか

 政府が「緊急事態宣言」を4月7日に出し、知事は県民と事業者に対し新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、自粛・休業を要請しました。当初、政府は休業等により収入が半減した非課税世帯等に対し30万円を上限とする所得補償を行うとしました。それに対し、要件が厳しく支給対象が少なすぎる、新型コロナ感染防止のためすべての住民の自粛や休業に伴う支給をすべきなど国民から批判の声が広がりました。国民の声に押され、その後閣議決定で、国籍を問わず全国民一人現金10万円支給と変更されました。給付金は新型コロナウイルスに対するすべての国民の生活を守るものとしての性格をもつものです。

新型コロナで全庁対応中の職員に水差す

 一人10万円給付が決定された後、元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹氏らが「公務員は毎月変わらず収入が入ってくるのだから給付金を支給すべきではない」と主張しました。そして、広島県知事は、県職員が国から給付を受ける現金10万円を県のコロナ対策に充てたいとの考えを表明しました。広島県知事に対し「究極のパワハラ」「カツアゲと同じ」など非難が殺到し、翌日事実上、撤回しました。

 新型コロナ対策の現場は都道府県です。自治体労働者は、感染症罹患への不安を常に抱えながら感染症対策にあたっています。全力で対策にあたる職員の士気を高めるのが知事の役割であり、職員の士気を下げることは新型コロナ対策の遅れにも繋がりかねません。

 知事からの「提案」はもとより、労働者を守るべき労働組合が、「提案」とはいえ給付金の使途を示すのは、「寄付にかこつけた強要」とのそしりを免れないでしょう。給付金の受給や使途は個人や仲間内での判断に委ねるべきです。

今、国や県がやることは本当に困っている人に手を差し伸べること

 「新型コロナ対策」は、人々の生活に大きな影響を与えています。雇用破壊を進め、営業をやめ収入が途絶え生活できないところまで追い込んでいます。これに対し早急に生活や営業支援を行うことが求められています。そこに目をつぶって「一律10万円1回」では政治の責任を果たしたことにはなりません。労働者・学生・中小企業・商店など影響を受けそれまでの生活がたちいかない人たちにこそ支援金や家賃補助などを行うべきです。また、確かに自治労県職労号外のとおり、事業者への休業要請への協力金10万~30万円は足りないことも事実です。感染症拡大を阻止するには、今まさに困窮している県民や事業者への休業補償を確実に行うことにより安心して自粛、休業できる環境を整えることが必要です。県は、財政調整基金や県債管理基金をさらに取り崩しその財源にあてるともに、国の補助対策の更なる拡充を、全国知事会らとともに国に要請し続けるべきです。

医療・公衆衛生体制の充実を

 なお、先の主張を行う橋下氏は、4月3日のツイッターで「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこはお手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします。(中略)考えが足りませんでした。」とつぶやいています。大阪府・大阪市に限らず、全国の自治体では、財政難を理由に職員の数を極限にまで減らしながら、非正規労働者への切り替えと民間化を強力に推し進めてきました。神奈川県(知事部局)でも約20年間で約1万3千人から7千人までと半減近くまで職員を減らしてきました。それは恒常的な長時間労働や職場の慢性的な疲弊を招きました。緊急時のいま、極限まで職員を減らし続けてきた「つけ」を、現場の職員や住民がまともに負っています。橋下氏の発言は無責任で、憤りを禁じ得ません。財政難や公務員バッシングに乗じて住民が安心して暮らすという地方自治の土台を取り崩しながら、大企業の内部留保を過去最大にまで拡大させてきた政治・行政の問題点が、いよいよ明らかになったと言えます。大企業中心から国民の福祉に重点を置いた国の在り様が求められています。

 県職労は、新型コロナ対応にあっても現場の職員が安全に業務を行えるよう、マスクなど必要な物品の確保や人員増などを引き続き当局に追求していきます。

新型コロナ対策で直ちに必要なこと(4月9日県職労「緊急要請」ほか)

<新型コロナ対策の拡充に関すること>

  • 医療機関の感染症拡大を防止し医療崩壊を防ぐためのPCR検査体制の抜本的強化
  • 中等症患者受け入れ病院の拡充
  • 医療、看護のための防護衣などやマスク、手袋、消毒液など必要な物品の確保
  • 感染症拡大を抑えるため、徹底した外出の自粛や企業活動の休業に対する補償の徹底

<県職員の労働条件に関すること>

  • 対策に携わる職員の感染症罹患を回避する環境整備
  • 県民対応を行う職場でのマスク等の必要な物品の支給
  • 保健師や看護師等の専門的人材の増員
  • 職員の労働時間管理やメンタルヘルス等の健康管理
  • テレワークを安心して行える環境整備
  • 感染症対応をする職員への手当の支給
  • 感染症に罹患した者の個人情報の慎重な取扱い
  • 対策本部、軽症・無症状者受入れ施設、ネット難民など受入れ施設に派遣される県職員の賃金労働条
    件等の情報提供と労使協議

PDF版は、県職労情報No.1376(学習資料のページ)をご覧ください。

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