県政散歩(1919号)


 年明け早々、あわただしい一年を予感させられる出来事がメディアを賑わした。条例改正による退職手当削減を前に、年度途中で退職する地方公務員が各地で広がっているとの報道である。多くの記事がこの動きを「駆け込み」と表現し、批判的な論調を端的に伝えていた。

 ところで、今回の出来事の端緒となった人事院調査による約400万の官民格差。額の大きさをみれば、調査手法について丁寧な分析、議論が必要なはずである。しかし、国の有識者会議で額の妥当性に疑問が出されたものの、結果を急ぐ観点から「駆け込み」でまとめられ、閣議決定されてしまったのがいきさつである。

 そして削減法案は国会解散を控える11月16日に「駆け込み」で審議入り、たった一日で成立してしまった次第である。

 この削減額を国とは職員構成など事情が異なる地方にあてはめると、減額率が違ってくるなど、新たな問題も生まれてしまう。理不尽の波及が止まらぬ事態なのである。

 今回の「駆け込み」騒ぎは単なる損得勘定ではなく、悲しいかな、公務員のモラルからの「縁切り」の意を読み取るべきではなかろうか。国民感情、県民の理解を盾に理をないがしろにし、追いつめるばかりでは、誰にとっても良い結果にはつながらない。これからどんな「駆け込み」が続くのだろうか。

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