「東京家族」監督:山田洋次


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 監督50周年記念映画と銘打った山田洋次の最新作。この「東京家族」は小津安二郎の「東京物語」のリメイク作品であり、比較されるのはやむを得ないことだが、なぜ今さら再映画化なのかという疑問が最後まで残った。

 山田作品は「男はつらいよ」シリーズのように「家族」をテーマにした作品が多いが、この「東京家族」もその範疇に属する作品だ。

 地方から上京した老父母が子供達の家を訪ねる。当初は歓迎していた子達もそれぞれの生活があり、やがては対応に負担を感じはじめる。そんな中、老母は客死してしまう…。

 小津の「東京物語」は昭和28年に発表された。親と子と孫、連綿と続く日々の生活と小さな軋轢。死さえ淡々と描いたこの映画は、屈指の名作とされている。小津50歳の作品だ。

 今年82歳になる山田の「東京家族」は、東日本大震災の経験を踏まえた作品にしたいという監督の意向で、若干「東京物語」とは違った脚本になっている。

 昭和28年に50歳の小津と、平成25年で82歳の山田の二人の監督の人生観を比較するのも楽しい。
(2013年 日本)

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