グローバル企業奉仕のために県の財産を切り売りすることは許されない(県職労連声明)

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声明

 7月18日、「県緊急財政対策本部調査会」(神奈川臨調、座長・増田寛也元総務相)は「県有施設の原則全廃」「補助金の一時凍結」を前提とした歳出削減の断行を求める中間意見をまとめた。知事は「非常に厳しい内容だが重く受け止め、意見を大胆に生かしていきたい」と述べ、捻出財源で経済の成長戦略を進めるとしている。

 県有施設について中間とりまとめは、「原則全廃という視点」で検討期間は3年とし、図書館など県民利用施設、障害者施設など社会福祉施設、県営住宅についても全廃を求めている。また、自治体など団体に交付している補助金については、「1988年度以前」から実施などを目安に原則廃止の視点で見直し、少額補助金は全廃するとし、まさに県政解体を提言したものとなっている。

<財政危機を煽る知事の主張に根拠はない>

 中間まとめは、平成25年・26年の2年間の財源不足額が1650億円に上り「企業であれば破綻寸前」とセンセーショナルに発言し、有無を言わさず全廃を押し付ける理由としている。県有施設やそれに伴うサービスの存在、市町村補助金の現状は、県民要求運動や市町村要望の積み重ねを背景にしており、県議会や市町村議会での議論の到達点に立ったものである。知事が「血反吐を吐いても」と力をいれて全廃を推し進めようと躍起になっているとしても、臨調=外部機関の提言をもってして県民の声を無視できるものではない。

 さらに市町村・団体の補助金・負担金や教職員人件費など教育のあり方、県職員の人件費なども、法律や条例、そして住民との合意に基づいているものであり、知事の個人的な願望で無視できるものではない。

 臨調は、ライフイノベーション特区など知事みずからがやりたいとの財源を捻出するために、財源不足を看板にしながら県民・市町村の権利を乱暴に踏みにじる後押し役を担わされたものである。

 破綻寸前として声高に叫ぶ県財政については、まったく根拠を示さず臨時財政対策債を含む県債残高と今後2年間で生じるとした1650億円の財源不足額を述べるにとどまっている。そもそも、臨財債の発行や財源不足については黒岩知事による予算編成過程で突然に出てきたものではない。岡崎県政下で財政危機宣言を出していらい続いてきた県民サービス切り捨て、職員の労働条件引き下げのために毎年のように繰り返されてきた手法である。

 県債については発行残高3兆5千億円のうち実に1兆6千億円が臨時財政対策債を中心とした特例的な県債であり、一般県債はむしろ減少傾向が続いている。県債のうち建設債などは多年の年度を越えた公共施設の利用を県民が均等に負担するために発行するものであり、赤字県債でないことはいうまでもないことである。他方で臨調での議論でも指摘されたとおり、臨時財政対策債は国が本来負担すべき地方交付税を県が肩代わりして生じたものであり、年々の発行はもとよりその償還についても県の裁量の外にあるものである。これを区別せず、財政危機の責任とその負担を県民に求めることは許されない。

 臨調での議論で委員は「臨財債の償還、だれも国からくるとは思ってないでしょう」といって、国の借金の一部を県や県民に押し付け、国の無策による財政破綻の責任回避を合理化しようとしている。

 また、財源不足額について昨年の予算編成についていえば、不足額は既存の事業を続けていくとした場合の積算額の合計から、県税、交付税など収入額の合計を差し引いたものだとしてきたが、秋に行った地方交付税等の収入額の見積りが翌年2月には600億円も増額見積となるなど、為にする不足額の演出であるといっていいものとなっている。これまで職員人件費や県民サービスなどの切り捨てのために活用されてきた財源不足宣伝を知事流のバージョンアップで県政そのものの解体に利用したものであると言っていい。

 県財政当局が県債の販売のために銀行や投資家向けに発表しているIR(インベスターズリレーション)資料では、都道府県別の財政力指数や県債残高などを明らかにしている。これらの資料は、いずれも神奈川県の財政が全国でも1,2位を争う健全性を保っているとしており、破綻寸前という臨調での議論と真逆をなしている。県民職員には負担を強いながら他方で銀行や投資家には健全を言う二枚舌は許されるものではない。

<関連資料>

地方債残高健全度(PDFファイル)

<県民サービスを放棄し、グローバル企業に奉仕する黒岩県政>

 提言を受けた知事は「単に削減して経済を動かすエンジンが縮小しては元も子もない」とし、歳出抑制分を経済政策に充てる方針を強調した。当然に冷えきった県経済を活性化させるために県は大きな役割を果たすべきだが、これは県民生活の向上に直接効果のある経済対策を実施してこそ意味をなすものである。

 しかし、知事が声高に叫ぶ経済対策は、選挙政策としたソーラーパネル設置、国の総合特区制度を利用したライフイノベーションによる医療特区の実現、そして第4の核とした「新しい観光拠点の創出」の3つだが、いずれも経済対策としては不充分なものである。

 特にライフイノベーション特区については、国に対して申請していた京浜臨海部の医療特区の具体化を全県規模に拡大していこうとするものである。それは、現行の特区(規制緩和)による創薬事業に上乗せして医師養成や自由診療を全県規模で実用させようとするものであり、アジアの富裕層をターゲットにした「医療ツーリズム」の実現を目指すとまで公言しておりもはや県民さサービスの拡充は視野に入らないものとなっている。

 神奈川県がグローバル企業や一部の海外富裕層のための行政運営にその内容を変化させていくとしたら、もはやそれは住民自治、団体自治を基本とした地方自治体の責務を放棄し自治体の存在意義そのものへの挑戦と言ってもいいものである。

<県職員の誇りと生きがいを奪う構造改革に反対しよう>

 県職労連は県民・職員に呼びかける。グローバル企業の動きやすいように県政と県土を改造する黒岩知事の構造改革路線に反対し、県民要求に応えられる県民サービスの拠点を県庁の中につくろう。県民利用施設の役割、出先機関の必要性、市町村・団体補助金の意味と重要性を語ろう。自らの仕事への誇りをかけてこれまでやってきた県の責務を住民の中に広めよう。そして県民、施設利用者、県民団体、市町村など広範な層と連帯して乱暴な県政解体攻撃に対抗しよう。

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