2014年度当初予算案に対する県職労連声明

 提案・声明・見解

声明

政府アベノミクス追随の大企業重視!
「緊急財政対策本部」は解散せよ!
「緊急財政対策」と「消費税増税」による財源捻出で地域経済再興戦略を打ち出す

黒岩知事は2月7日、「2014年度当初案の概要」「2013年度補正予算案の概要」「緊急財政対策の取組み結果」を記者発表しました。

2014年度予算案は、地方消費税増税による県税収入約1000億円増を背景に、その規模は2013年度比5.8%増となる1兆8650億円と過去最大規模となりました。予算の使い道である歳出面では、人件費が実質(2013年度当初予算未計上の退職手当分を含む比較)1.8%減もあり、義務的経費は実質3.4%の伸びに抑えられる一方、政策的経費は10.3%と高い伸びとなりました。

県職員の人件費抑制を中心とする「緊急財政対策」と「消費税増税分」による財源捻出が、黒岩知事の進める地域経済再興政策に充当されるという予算案といえます。

今後、県職労連として、職場組合員、県民団体等からの意見をもとに詳細な分析を行ってまいりますが、今回の予算案を踏まえ、引き続き「県民サービスの充実」と「全体の奉仕者として働くことができる職員の勤務労働条件の確立」に向け奮闘していくことを表明するものです。

「社会保障と税一体改革」はどこへ

黒岩県政も安倍政権と同じで地方消費税増税分は社会保障費に回されないのか

 4月1日から消費税増税が行われ、増税分3%のうち0.7%が地方消費税増税に充てられることとなります。(従来分1%に加え1.7%)。2014年度予算案では増税による地方消費税増収分を174億円としていますが、地方消費税増税影響が年度後半になるとはいえ、地方消費税増収466億円(全体では2,131億円)中、どうして増税分が174億円のみにとどまるのか不明です。2014年度県予算編成方針では、地方消費税増税分は全て社会保障費に充てられることから、引き続き財政状況は厳しいとし「緊急財政対策」を踏まえた事務事業の見直し(財政当局は否定しますが実質的には枠配分による一律マイナスシーリング)を行うよう指示しました。

 しかし、その結果の予算案を見ると、少ないとも考えられる174億円増収分も「社会保障安定分」として90億円を従来の一般財源に充当。都道府県における社会保障費である介護措置医療費の伸びは2.3%(66億円)にとどまり、2013年度の伸び8.7%(229億円)を大きく下回っています。保育や小児医療等に関する市町村補助金が充実したことも含め、社会保障の実施主体であり基礎自治体として県民のいのちと暮らしを支える市町村への交付金・補助金を充実したことは評価されますが、消費税増税の使い道という点では、「県民の理解が得られない」といえます。

 国借金漬け財政との単純比較にはなりませんが、安倍政権=アベノミクスによる財政出動では消費税増税分も、経済再興戦略費用と消費税増税による企業活動停滞対応策費に充当され「大企業儲けて民滅ぶ」の政策が進められています。

 そもそもわが国の消費税は、生活必需品等の非課税措置が行われていないこともあり、所得再分配効果は薄く所得逆進制があるといわれています。社会保障費に充てるという目的のなかで国民が「やむを得ず」合意した消費税を、法人税や所得税減税、租税特別措置法等の減税措置で課税免れ、利益を増す富裕層や大企業のために回すことはあってはならないことです。消費税増税分がどうなったのか。また今後どうするのか県民に明確に説明することが求められています。

2013年度・2014年度の財源不足1,600億円は解消

「緊急財政対策」終結というが「県民負担」「職員総人件費削減」はどうするのか?いまこそ人員増を!

 2012年10月に出された「緊急財政対策」は、2012年度から2014年度3年間で306名の行政職員削減と人事委員会勧告を逸脱する給与抑制で746億円、県単独事業や施策・事業の見直しなど県民市町村負担増で355億円の財源を生み出しました。700億円不足といわれた2013年度の決算は当初予算に比べ介護措置医療費など義務的経費が大幅に減る一方、税収の伸びもあり財政基金積立金に606億円も積増しするほど好転しました。

 将来的の歳出に備えた財政基金は2012年度末に底をついた状況にあり、一定規模を確保する必要がある(2013年度税収伸びに伴う交付税返還等もある。)とはいえ、「緊急財政対策」によって生まれた「県民負担」「職員総人件費削減」は回復することも含め検証し検討をすすめる必要があると思われます。

 「緊急財政対策本部」の解散後も「緊急財政対策」を基礎的条件につくられたロードマップを着実に進めていくとしています。条件変更に伴う見直しは確実に行うべきと思いますし、引き続き継続するのであれば、今後の県財政見通しを再度示すなかで県民合意を得るべきと考えます。

 裏面にもあるとおり、2014年度の人員配置は知事部局で35名と、この間の削減幅に比べ圧縮され、県税事務所や保健福祉事務の再編による定数削減も、「県民サービス水準低下反対」のこの間の私たちの運動の結果、少ない人数にとどめました。しかし、この間の削減理由として挙げられた「事務事業の見直し」の多くは、実質的に見直しはなく、職員に過重負担をかけることで済ましてきているのが実態です。いま職場では、メンタル疾患の増大とあわせ病院・診療所に行く暇もなく病気が重症化するケースも生まれています。この間できなかった業務量に見合う人員の配置を速やかに行うことが求められています。

黒岩版地域経済再興戦略

「地域経済のエンジンを回す神奈川の挑戦」で県内経済は活性化するのか

 今年度予算で打ち出された「京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略特区」「さがみロボット産業特区」「かながわスマートエネルギー構想」。それぞれ、予算上の制約はもとより、地域性や県内企業を視野に入れた工夫は見られますが、基本的にはアベノミクス経済再興戦略に呼応したものとなっています。自らが先進的な打出しをしたと知事は議会でも鼓舞していますが、その多くが政府戦略に一致しており、財源や制度的な裏打ちを含め政府追随といわれてもしかたがない側面はあると思います。

 これらの戦略の呼応できる企業はどこにあるのでしょう。設備投資や情報収集、製品開発力という点では、どうしても大企業、ないし一部のベンチャー企業に偏ることが懸念されます。実際の県内経済を支えているのは、こうした企業ではなく中小零細企業。経済対策として1,650億円を充てたとしていますが、中小企業支援の新規事業は殆んどなく融資など既存事業の拡充程度にとどまっています。

 また、県内需要の多くを占める消費支出を支える雇用労働者対策も、高校生や女性、障害者の就労支援策が打ち出されていますが、新規事業の多くは「グローバル人材育成」「ベンチャー支援」となっており、社会問題化している低賃金不安定雇用の非正規雇用労働者対策等が充実したとはいえない内容となっています。

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