「児童虐待対応」「災害復旧」人員増 職場からの要求反映 予算はSDGsとして「気候変動対策」「未病施策強化」を打出し

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県民要求に応えるためには、活き活きと働き続けられる職場・職場環境の改善が必要です。県民要求に応えるための予算・人員闘争を職場からすすめていこう。

2020年2月7日、黒岩神奈川県知事は、2020年神奈川県議会第1回定例会に提案する神奈川県予算案及び条例案に関する記者発表を行いました。

〇財源不足(予算編成方針時)は起債と基金取崩しで補填。硬直化する県財政

 2020年度予算編成では、700億円の財源不足が強調されるとともに、2019年度も米中貿易摩擦による県税収入悪化と台風被害対策に伴う財源不足が生じるとされ、見通しが立たない中で、県労連2019年度賃金確定交渉も1月下旬まで持越すという事態となりました。

 この財源不足は、300億円の減収補填債・調整債の発行、170億円の地方譲与税の増、80億円の公債費・介護・医療・児童関係費減少、80億円の事業見直し、130億円の財政調整基金取り崩し等で補填され、当初予算が組まれたことになります。

 例年、予算編成時に叫ばれる県財政の危機的状況ですが、今回は従来のよう前年度の想定外の税収増や歳出減ではなく、その多くは起債と基金取崩しで補填され、公債費が減少したとはいえ、財政面の厳しさは従来にないものとなり、財政の硬直化が進んでいます。

 こうした中でも、知事は「県民のいのち」を守ることを重視したとしていますが、本当にそうなのか。事業の見直しの多くは当然減の要素も多く、知事の掲げる「未病」や「マグカル」といった事業には手がついているとはいえません。

 厳しいのであれば、福祉・医療・介護・教育など、「県民が実感できる事業」に重点化することが求められていると考えます。

〇消費税増税分は政府の「新しい経済政策パッケージ」への補填で解消

 こうした中、昨年10月の消費税率引上げで生じた財源については、政府の示す社会保障関連事業に、その全てをあて県単独事業の財源には充てられていないとしています。消費税率引上げは、自治体独自の社会保障拡充には結びつかないとするものです。

 その内容は、今後詳細に分析をしていきますが、消費税率引上げで生じた財源の一部は、既存事業にあてられていることが考えられます。そうなれば、そこで生じた財源は、何に使われることになったのか。地方自治体の単独事業として行う社会保障関連事業の拡充にあてられているのか十分に検証していく必要があります。

 特に、この間、県民から要望の強い小児の医療費助成(医療機関窓口負担軽減制度)の拡充等は、神奈川県は他県に比べ遅れており、そうした事業の拡充にあてることがどうしてできないか明らかにしていく必要があります。

〇「気候変動対策」と「未病施策強化」で「県民が実感できる」県政となりえるか

 今回の記者発表では「かながわ気候非常事態宣言」を行い、そのための基金設置の条例案も説明しました。しかし、その事業内容の多くは、気象災害から県民自らが命を守るための注意喚起や防災情報提供、熱中症対策となっており、温室ガス対策は、既存事業の太陽光発電にとどまっているのが現状です。

 基金が東京電力や企業庁の電気料金収入からの「環境価値分」をもとにしていることもありますが、温室ガス発生源の「火力発電所」等に対する規制をすることなく、県民意識の向上だけをすすめることは「気候変動対策」といえるのか疑問です。

 「未病指標」活用を中心とする「未病施策強化」も同様です。政府に「未病」が取りあげられたとしても、「未病」は企業には理解できても県民には理解できないものがあります。健康増進対策、所得による健康格差解消施策、重症化予防など、直接、県民が行政サービスに接し実感できる施策の展開が求められています。

〇2年連続で条例定数増に。児童虐待対応の支援体制強化や災害復旧対応などで配置増

 職員定数は、昨年に引き続き知事部局で99名の増となり、各局に配分されました。その主な増要素は、児童虐待対応の支援強化で45名、災害復旧対応28名(県土整備分14名、県政センター環境農政分14名)、全国健康福祉祭(ねんりんピック)開催準備17名、オリンピック・パラリンピック業務推進9名、その他業務増34名(知事部局)などとなりました。

 児童虐待対応は、虐待児童の増加によりその対応が強く求められていたものであり、災害復旧対応では、対応のために年末年始も業務に就かざるを得ないなど人手不足への手当、そして時間外業務の縮減のための人員増がその他業務増34名に含まれるなど、またCSF(豚コレラ)の危機管理体制強化3名など、職場の人員増要求に応えたものとなりました。

〇県民のいのち、暮らしと営業を守る予算と組織・人員配置となっているか。職場から声を上げていこう

 毎年の予算や人員配置が、県民の要求に合致しているのか、職員の働き方や職場環境の改善となるのかが問われてきます。

 県職労連は、脱炭素社会実現のために「火力発電所建設NO!」、公立・公的病院の見直し・統廃合NO!、中小企業・小規模企業の活性化、児童虐待対策のハード・ソフトの充実など県民要求の前進と、活き活きと働き続けられる県庁職場の実現のために奮闘します。

 県職労連に結集し、一緒に要求実現の運動をすすめましょう。

 配置定数など詳しい情報は、県職労連情報No.101(学習資料のページ)をご覧ください。

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