2016年度予算・人員定数案に関する見解

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声明

県の危機的な「構造的財政問題」は本当にあったのか。プライマリーバランスが優れ、財政力指数が高い神奈川県。その神奈川県の財政課題として、県当局は説明責任を果たすべき

 越年となった2015賃金確定闘争で、県当局は財源不足を理由に「県人事委員会勧告の完全実施は厳しい」「県民の理解を得るためには諸制度の見直し(削減・廃止)をせざるを得ない」と強調してきました。予算編成においても厳しい査定が行われ、県民の求める福祉や教育に関する予算要求に対して困難とする対応が繰り返されてきたところです。

 その財源不足は、総額抑制と過大税収増算定により地方交付税(臨時財政対策債を含む)が大幅に削減され、予算編成方針時の650億円からさらに拡大し、770億円まで膨らむこととなりますが、2015年度の県税、地方譲与税、地方交付税等による670億円の増によって吸収され解消されることとなります。

 2015年度補正予算との関係もありますが、2016年に支出すべき公債費財源(県債管理基金繰入金)を、2015年度に税収として確保することで解消されたことになります。

 2015年予算編成においても、前年度2014年度の収支改善から財源が生み出されていますが、同様のことが今回2016年度予算でも行われたことになります。

 大企業や富裕層を中心に収益・所得が改善されただけでなく、適正課税や収納率向上で県税職員が奮闘した結果、個人県民税や法人二税が大幅に増収してきている結果と見ることもできますが、2015年度も予算編成過程では550億円の財源不足といわれながら、決算見込みでは逆に670億円の黒字となることをどう見たらいいのか。

 確かに、介護措置医療費など県民生活に密着し切り崩すことができない義務的経費が多い中、安定財源を確実に確保することが困難な地方税財政上の課題があることは事実であり、次世代の後年度負担となる県債発行に安易に頼ることのない財政運営をすすめることは必要と考えますが、こうしたことを繰り返すと「オオカミがきたぞ」になりかねません。

 プライマリーバランスは他の都道府県に比べ極めて健全であり、財政指数も高い神奈川県が、「財源不足」を言わざるを得ない財政の構造的な問題点と、その解決方策について、県としてわかりやすく県民、県職員に説明責任を果たすことを求めるものです。

危機的な「構造的財政問題」を掲げながら政策的経費は増大。重点事業は、県民生活の実態に沿ったものであるか検証が必要。

 歳出でみると、介護・医療・児童関係費では前年度比130億円3.9%増など、人件費を含む義務的経費は224億円1.4%増で、引き続き義務的経費の割合は82.6%と高い比率となっていますが、政策的経費は義務的経費以上の229億円7.0%増と大幅な伸びをみせています。

 「オオカミが来たぞ」で生み出された財源が、政策的経費にまわされたとも見ることもできます。

 政策的経費は、神奈川県として独自の事業を行うための経費であり、その確保が図られることは地方自治体がその機能(住民自治、団体自治)の発揮のため、良いことと考えますが、要はその中身です。

 新年度予算説明で一部新規として打ち出された事業には「中小企業・小規模企業活性化の推進」「フラワーセンター大船植物園改修工事実施設計費」「箱根山火山災害対策」「小規模保育事業所の整備促進」「子育て支援員研修事業費」「県立教育施設整備の推進」など、詳細な分析は別として県民の声を踏まえた内容がある一方、事業効果が県民から理解できない、ないし見込めない、或いは一部の企業や県民に限定されると考えられるものもいくつか見られます。

 「未病を治す取組み」「新たな企業誘致施策『セレクト神奈川100』」「ロボットと共生する社会の実現」「かながわスマートエネルギー計画の推進」「行ってみたい神奈川の観光魅力づくり」「マグネット・カルチャー推進事業費」。横文字が多いこともありますが、事業内容を県職員が県民に翻訳しなくてはいけないことはどうかと思われます。

 新年度事業では、様々な媒体を用いた広告宣伝費が大幅に増えていますが、イメージ先行行政で、県民の県政に対する本当の理解が得られるか疑問です。県民生活の実態や声、そこに日常の仕事で接している職員の声を踏まえた、地についた県政にしていくことが、県民の信頼にこたえることであり、企業商品やサービスの販売とは違うと考えます。

限界を迎えた条例定数削減。条例定数増は職場実態の反映。

 今回、知事部局の条例定数が24名増員されることとなりました。1974年ぶりとされています。1974年の条例定数は13783人。1997年に13551人。2005年に病院機構の前進となる病院事業庁定数2282人が分離されたとはいえ、2003年度から「行政改革」により出先機関の統廃合も含め定数は連続して実施され2015年度定数は7461人となりました。

 県立病院を除くとピーク時(1974年度)から見て4000人削減。3分の2以下となっています。

 教育委員会からオリンピック・パラリンピック関係で知事部局(新設スポーツ局)に24人移管され、それとは別にスポーツ局で39名の増員が行われることが主な理由としてあげられますが、対外的にも、もうこれ以上削減を示すことは困難な職場実態であることを、当局自体が認めたこととなります。

 さらに言えば、東日本大震災クラスの地震が起こった際に対応できる職員体制を確保することを考えた場合、いわゆる「保留定数」も含め、県民に対して増員を示していくことが、「安全安心な」神奈川県としていくためにも必要かと思われます。

 条例定数が増えたとはいえ、実人員の配置は、ヘルスケアやスポーツ局など、黒岩知事が重点とする政策スタッフに厚く、現場には厳しい状況であるのは事実であり、業務実態にあわせた人員配置という面では、不十分である状態は変わらないと思われます。

 業務に見合う職員配置を早急に行うとともに、業務改善として「知事対応」「議会対応」「予算対応」など業務プロセスの簡素化図ることが職員の声です。

 知事及び幹部職員が、「イクボス」宣言(育児時間を職員がもてるなどライフアンドバランスの実現に向け、経営者・管理者としてマネジメントすることを宣言すること(らしい)。)するのであれば、そうならない原因として定数があることを受け止め、「イクボス」として適正配置に努めていくことが今、求められていると思われます。

 職員配置定数など詳しい情報は、県職労連情報No.86(学習資料のページ)をご覧ください。

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