2013年度当初予算案に対する県職労連声明

 提案・声明・見解

 黒岩知事は、2月18日「2013年度(平成25年度)予算案の概要」と「緊急財政対策の取組状況」について記者発表するとともに、県職員の人員配置に関連する条例定数改正案について明らかにした。

 2013年度予算編成では、2013年度2014年度の1600億円財源不足を背景とする「緊急財政対策」を受けた「補助金削減」「県有施設廃止」方針のもと、職員には、膨大な団体や市町村調整や庁内調整業務が強いられ、また「相応の負担」として賃金削減が行われることとなった。

 県職労連は、県財政危機の原因は職員人件費や団体・市町村補助金にあるのではなく、都道府県の行政需要に見合う財源が確保されない、或いは確保されたとしても景気変動を受けやすい、現在の地方税財政構造にあると考え、県に対し国に抜本的な改善を求めるよう主張するとともに、知事会に対しても自治労連を通じ安定的な都道府県財政確保を強く要望してきた。

 そうした県職労連の基本的な立場を踏まえ、2013年度当初予算案に対する見解と声明を次のとおり表明するものである。

国交付税・交付金による人件費削減を容認する一方で「地方税財政制度改革取組み」の到達点が欠落

 前年度当初予算対比で歳入をみると、一般財源では県税収入が170億円増える一方で地方交付税が240億円減。特定財源では国庫支出金50億円、基金等の繰入金215億円とそれぞれ減。臨時財政対策債が200億円増額され、こうした中で、ほぼ前年度並みの財源が確保されている。歳出では義務的経費である介護・措置・医療関係費228億円増、公債費400億円増の一方、人件費は500億円減。政策的経費が228億円の減となっている。

 地方交付税減額分240億円は、県税収入の増額も反映していると思われるが、国家公務員の給与削減措置の地方公務員への反映分が含まれ、義務教育費国庫支出金(負担金)削減分40億円を含め、当初予算案において国の人件費削減方針を容認し、その一方で、「緊急財政対策」において問題とした臨時財政対策債の発行については200億円増額し、2630億円と過去最大の発行となった。

 「緊急財政対策」では中長期課題ではあるが臨時財政対策債の交付税化など「地方財政制度改革の取組み」をあげているが、当初予算案は、それとは全く逆の方向で動いており、しかも、こうした動きについて「緊急財政対策の取組状況」の中で全く触れられていない。

労使交渉抜きに人件費凍結を打ち出した「緊急財政対策」の取組み

 「緊急財政対策」による財源不足対策として、2013年度は、職員給与削減として160億円、職員数削減12億円など人件費総額で260億円を、県単独補助金見直し30億円、その他施策事業見直95億円、企業庁から借入100億円などであわせて540億円を確保したとした。

 しかし、国家公務員の給与削減措置による義務教育費国庫負担金への反映40億円が新たな財源不足として生じたと、当初の700億円との差額160億円に40億円を加え200億円の財源不足が残っているとし、義務的経費である職員全体の退職手当の一部を当初予算案計上から見送った。

 今後、この財源を「緊急財政対策」としてどう確保するのか。さらなる県単独補助金の削減を行うのか。具体的な方策が見えない中で、今回の措置は事実上、義務的経費である人件費の凍結であり、労使交渉も行われてない中で、このような措置は、かつてないものであり認めることはできない。

 もともと、昨年の賃金確定闘争では2013年度2014年度の財源不足を見込んだ中で、4%6%の給与削減水準を決めており、これ以上の削減・凍結は、事情の変更があったとしても、十分な協議・交渉があってはじめて行われるものである。

 事情の変更があるとすれば、それは国家公務員の給与削減措置の地方公務員・教員への反映であり、そのことと700億円財源不足の「緊急財政対策」とは別の次元の問題である。国の交付税等の削減を事実上認め、その対策を県の「緊急財政対策」として県職員、或いは県民に負わすことは認めることはできない。

12 年度の最終財政見通し示さず「200億円」の財源不足

 この10年来毎年県は、予算案の概要で、前年度の財政収支見通し・次年度以降の活用財源と予算案年度の財源不足対策を示し、前年9月の予算編成方針時点でのいわゆる財源不足額の対策を2年連結の対策として説明してきた。しかし今回は、12年度の財政収支見通しを示していない。2月補正予算案で歳入では、財政調整基金の取崩し中止に122億円程度が充てられ、歳出では新たに財政調整基金に301億円程度が積み立てられた。これらだけで420億円以上が、次年度以降の財源になるはずであり、200億円の財源不足は意図的、過大宣伝である。

職員配置133名の削減。必要人員の確保・業務見直しの検証が必要

 2013年度の職員配置について、県は知事部局について113名、他部局20名程度の削減を打ち出した。主な減要素として分権一括法施行準備終了、三浦しらとり園派遣終了、西部四技術校廃止等があるが、増要素として京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略特区等もあり、事実上、業務見直しという名目で、「緊急財政対策」推進のため、今回においても無理な削減が行われていると見ざるを得ない。

 県職労連・県職労として、今回削減が行われた職場が、実際に業務量が減っているのか。また、異常な長時間過密労働の職場における配置が増えているのか、事実に基づく検証を行い、労務統括官の回答にある「業務見直しによる削減」について明らかにしていく。

緊急財政対策は抜本的に改めよ

 県有施設の廃止・見直しについて10月に廃止としたのは9施設であったが、2月には20施設に拡大するなど、その具体化は急ピッチですすんでいる。近代美術館については「集約化を含めた検討」から「鎌倉本館を廃止」と踏み込んでいる。廃止対象となっていない施設についても、例えば保健福祉事務所の「再編・統合を検討」から「統合・再編し本所と支所を設置するとして、平塚・秦野、鎌倉・三崎、小田原・足柄上、厚木・大和の集約、茅ヶ崎の衛研内移転」、県税事務所は「18機関を12機関に統合」、家畜保健衛生所の「組織のあり方を検討」から「湘南家畜保健衛生所西部出張所を本所に統合」、水産技術センター(2支所)は「組織のあり方を検討」、農業技術センター(6支所)も「あり方を検討」に、かながわ労働センターは、「組織のあり方を検討」から「支所を含めた組織のあり方を検討」など、県としての方向性決定のプロセスに、県民意見を集約する手法がとられることなく、検討の内容も場も明らかにされることなく進められている。そしてその方向は県がこれまで市町村・団体、あるいは直接県民に提供してきた行政サービスをゼロにする内容を含む、いわば県政の解体というべき内容であることからも、県のもつ施設と機能の役割を多角的に検討・検証しすすめるべきである。

 県補助金についても同様である、少額補助金、長年に渡る補助金を中心に平成24年度限りでの廃止・見直しが273件中168件と全体の60%を超えた。そしてこれが平成27年度以降も続くとしている。県が市町村や団体を通じて行ってきた行政サービスの低下を生まないための方策を求める。

« »