最高裁「神奈川県臨時特例企業税違法判決」に対する県職労連声明

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声明

国が生んだ財政危機克服への地方の努力=課税自主権を真っ向から否定。県は「県民本位の税財制度構築」に向け更に主体性の発揮を。

最高最判決は極めて不当

 すでに報道されているように、最高裁判所は3月21日、神奈川県が2001年に独自に定めた法定外普通税「臨時特例企業税(臨特税)」条例は地方税法に反するとして、いすゞ自動車に対し還付加算金を含めた26億9千万円(納税額は19億円余り)の支払いを命じた。

 黒岩知事は「県の主張が受け入れられず残念。臨特税の納税者には、還付加算金を含め返還していきたい」としていすゞを含む納税者約1700社に総額635億円を支払うとした。

 県職労連は、今回の判決は、国の税財政制度に起因する財政危機克服にむけた地方自治体の努力を無にするとともに、憲法で保障する地方自治体の課税自主権を否定するものとして断固抗議するものである。

臨特税の背景にある県財政危機

 黒岩知事の「緊急財政対策」を受け、この4月から賃金抑制(一般職4%、管理職6%(管理職手当10%(継続))が行われるが、財政状況を受けた「賃金削減」が最初に行なわれたのは1999年3月の一時金(当時は6月、12月に加え3月も0.5月の期末手当があった。)であった。1998年9月、当時の岡崎知事は「県財政の窮状を訴える」とのアッピールを発表し、財政再生団体入りを回避するため一律に緊縮財政を指示。それをうけ「緊急財政再生団体入りによる福祉・医療・教育など県民生活にかかわる分野の水準低下」を避けるための職員の協力として労使交渉に基づき一時金削減が行われた。

 2001年の臨特税創設の背景には、こうした県財政危機があった。

当時の県職労(県職労連の前身)の財政危機克服にむけた基本的な考え

 県職労(県職労連の前身)は当時、財政危機の原因は「景気動向に影響をうける法人事業税・県民税の税制度」「国施策をうけた公共事業推進に伴う投資的経費と県債発行の増大」「国庫支出金の一般財源化など国庫負担の削減」にある。その克服は「中央集権的な財政制度と国税に偏った税源の見直し」こそ必要で、無批判に国の政策を受け入れ、安易に県民生活や職員に犠牲をもとめるだけでは財政危機の状況は一層悪化するとの主張を発表した。

臨特税は県民本位の県財政再建方策の一つ

 2001年の臨特税は、こうした県職労の主張とも合致し、県民本位の県財政再建方策のひとつとして位置付けられるものである。本来、県民が、地域における行政サービス水準を踏まえ、その対価として選択し納税すべきである地方税が、国税である法人税や所得税、租税特別措置法等の影響を受け「行政サービスのただ乗り」となってしまう「不公平」を是正するためのものと考える。(県議会は全会派一致で採択)

 今回の緊急財政対策に対しても、県職労連は、財政危機が国と地方の税財政構造の問題から生じたものであり、その解決こそが必要と主張してきている。

「経済のエンジン」では財政再建はできない

 黒岩知事は「経済のエンジンが回る」ことによる税収増で財政危機が克服できると主張し特区におけるライフイノベーション等を予算化したが、2001年からの臨特税増収でつぎ込んだ「経済のエンジン」を回すためのインベスト神奈川は、新たな税収増には結びつかなかった。

 いま、黒岩知事がすすめようとしている施策は、それ以上に経済波及効果が不透明であり、財政危機が克服できるとは考えられない。むしろ、「補助金削減」「県有施設全廃」「職員数削減」による行政サービス水準の低下と職員給与の削減は、地域経済の活性化の障害になることは明らかである。

最高裁判決に屈せず、県は県民本位の税財政再建にむけた取組みの強化を

 神奈川県も含め地方自治体の使命は、住民が安全・安心のうちに暮らし、営業が営まれる地域社会の実現であり、その役割を発揮するために住民本位の税財政構造の構築をすすめていく必要がある。

 県は、今回の判決に屈することなく、広く県民世論に訴えながら、県民本位の税財政制度の実現に向け国に対する政策提言とその実現に向けた取組みをすすめることを強く求めるものである。県職労連は、全国の自治体労働者とも連帯し、そうした神奈川県の取組みに積極的に協力していく所存である。

最高裁判決と緊急財政対策・交付税の関係。2013年度財政状況の説明責任を果たせ

 今回の総額635億円の支出は、さらなる還付加算金発生をなくすため、2012年度2月補正及び2013年度予算編成で積み上げられた財政基金を取り崩し速やかに行われることになると考えられる。

 そのことは判決を踏まえ否定されるものではないが、緊急財政対策で不足するとした700億円との関係。そして総務省による国並み賃金削減指導による300億円の交付税との関係。そして2013年度当初予算で退職手当200億円計上留保との関係も含め、県民・職員が理解を得られる説明が必要であると思う。

 一部報道では、判決が違法とされ650億円の支出がなければ、交付税削減があっても2013年度の財政収支は、4月からの職員給与削減(4%削減等)で均衡が保てたとも言われている。

 3月21日の判決日と同日に、地方公務員の給与削減を持ち込んだ地方交付税法改正案が自民党・公明党の賛成(共産党・民主党・社民党は反対)で衆議院を通過した。県職員だけでなく、職員給与に準じて賃金水準が決まる中小企業の労働者への影響から、地域経済と税収にもマイナスの影響がでることが予想されるところである。

 何のための給与削減なのか。「財政危機」ということばだけで済ませるのではなく、要因を明らかにした説明を、県職員はもとより県民にも行うことを求めるものである。

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